【究める】海事文化探究
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「浦戸湾の和船 - 和船の建造を試みる方のために -」
ろかいの会 会員の 芝藤 俊彦 さんによるレポート
高知県立歴史博物館 研究紀要18号より(2012年10月1日)
[資料調査員 調査報告]
浦戸湾の和船 - 和船の建造を試みる方のために -
報告者:芝藤敏彦
はじめに
アメリカ人の船大工、ダグラス・ブルック氏が佐渡のタライ船を始めとして和船の建造を手がけられ、失われていく和船建造技術を惜しまれているというヨット雑誌の記事(「和船建造の技を学び伝える米国人」『舵』2006年3月号)を読んでから、私には高知のあちこちに点在している木造和船が初めて見えるようになった。何気ない日常生活の中に貴重な素晴らしい物が存在しているのに、私は外国のヨット等を追いかけていて、日本の伝統的な船を見過ごしていた。
40年前には身近に見られる小型の船は全て木造だったが、急速なFRP (ガラス繊維強化プラス チック)船の普及で土佐湾、浦戸湾内で見られる船は、ほとんどFRP船ばかりになった。しかし、 高知はまだまだ木造船が残っている地域だ。今から数少なくなった木造船を絶滅から救う運動を始め よう。和船船大工の高齢化で残された時間はあまりない。そこで、まず知り合いの船大工、弘光優氏 に弟子入りと称して建造方法を習い始め、次いで和船の情報を発信し収集するブログを始めた。プログ「和船船大工弟子入り日記」を情報共有の道具に使いたいと考えたのである。
現在はブログの巻頭に掲げた下記の事柄に取り組んでいる。
1 船大工を訪問して和船に関する様々な情報を教えていただく。
2 現存する建造された和船を一般的な造船の図面に起こして、将来の建造に備える。
3 教わった和船建造方法で実際に和船を作ってみる。
4 将来の環境で建造可能な木造和船を考え設計し建造する。
5 木造の美しい日本の船を存続させるためには、どうすれば良いかを考える。
本稿は、船大工に弟子入りして和船を建造した記録を中心に、高知市周辺の和船や訪問した船大工 の聞き書きをまとめたものである。これから和船の建造を試みる方の参考になれば幸いである。
1.高知市周辺の和船と船大工
写真1 長浜 花街道の網船
高知市長浜花街道に置かれている全長36尺(約1 1m)の網船。長い間使われずに放置され船体後部は 傷んでしまったが、ミオシ(水押し、船首部)はまだ 形を留めている。今の和船の置かれている状況を体現 しているようで痛ましい。南国市前浜には昭和20年 頃建造のきれいに保存されている一対の網船がある。
写真2 四万十川船
川で使われる一般的な船は平らな船底板の左右に側板が付いた三枚造りと呼ばれる構造をしている。写真 は幡多郡四万十町十和の「道の駅四万十とおわ」の船 である。同様の船が高知県立歴史民俗資料館に収蔵されており、田辺寿男氏が、『高知県立歴史民俗資料館 研究紀要 第6号』の「木造川船の造船記録」にまと められている。
写真3 屋形船
香宗川に浮かべてあった屋形船。三枚造りで波が来ると大きく揺れる船型なので川や湾内などの静かな水面でゆったりと過ごすのに向いている。現在は鏡川や浦 戸湾での船遊びに料亭が運航している。
写真4 仁淀川船
高岡郡越知町の能勢昭夫氏は建築業、パラグライダー事業もされていた。仁淀川流域での船大工として の評価は高い。越知町横畠の造船所で能勢昭夫氏が建造中の船を見学した。様々な工夫された治具を使い非常にきれいな板の接合技術であった。私が設計した船 の建造をお願いするつもりであったが、モーターパラグライダーの事故で亡くなられて残念でならない。川船は三枚造りと呼ばれる断面が箱型構造の船が多いが仁淀川、物部川、鏡川水系では海で使われる船と同じ五枚造りの船が鮎船として使われている。五枚造りの船型は次章の山中利雄氏製作の模型 で説明する。
写真5 竹村雅夫氏建造の土佐湾での釣り船
高知市種崎の竹村雅夫氏(昭和8年生)、浦戸湾周辺の造船所で大型の木造船の建造に従事された。30 年ほど前に自分が乗る為に材料を厳選して建造する。 ディーゼルエンジンを乗せている。海で使えるように波の打ち込みを防ぐ側板を高く付けている。元気に冬でも毎日この船で桂浜の沖へ釣りに行かれる。
写真6 柳原造船建造の海釣り用の20尺和船
高知市御畳瀬の新川川沿いに木造船の造船所が3軒 ほどあった。昔のまま残っているのは柳原造船所だけである。柳原広太郎船大工は亡くなられたが今も造船所には完成した新船が1艘ある。柳原氏は新しい技術 や設計を取り入れて和船をどんどん改良する方であった。甲板は水密(水が漏らない防水構造)に造り、波が打ち込んできた場合や雨水などが自動排水されるよ うに工夫されている。豊臣秀吉の時代には造られていた外洋航海の出来る御朱印船の技術は江戸時代の鎖国政策によって失われ、水密な甲板は板を並べただけの敗き板になってしまっていた。
また、船底にはFRPを積層し防水と船食い虫対策を施してある。船食い虫は「ごかい」のような 形状の二枚貝の一種で船底から船体に食い込み木を齧りトンネルをどんどん掘って船をダメにしてし まう木造船には最も危険な生物である。船食い虫対策は船底塗料(昔はコールタール)を年に1、2 回塗りなおす時にワラを燃やして虫を燻したりバーナーで船底を焼いて虫を殺したり、あるいは船食 い虫は真水に入れると死んでしまうので川に持って行ってしばらく置いたりした。FRPを外部に張 ると虫は木部まで入れない。
写真6の船は30年ほど前の建造で、船外機仕様で船尾の形状は普通の和船とは異なる。水密甲板 になっており軸先やカンコ(魚槽)など工夫が凝らされているが、船の復原力の知識が十分でないの で重心の高さを計算に入れることが無く不安定な船になっている。水密甲板は船が浮いた状態で甲板 上面が水面より高くないと水が排水されない。人の乗る位置は甲板の上なので船底に乗るよりも20 cm以上高くなる。重心が高くなり復原力が小さくなる現象は実際に船に乗っている人には体感されていた。舳先や甲板上に色々構造物を作るともっと重心が高くなる。帆で走る場合には特に復原力が小 さいと転覆の危険が大きい。
写真7 片山和船
片山造船所は高岡郡中土佐町上ノ加江の漁港にある。 親子二代の造船所である。片山丈進氏(昭和7年生) は木造和船の船大工であり、息子さんの幸広氏は造船 科卒でFRP船を建造していた。
平成19年に中土佐町の注文で3艘の全長7mの和 船を建造し、平成22年には宿毛市の注文で3艘建造した。今回一緒に和船を建造することで木造和船の伝 統的な建造方法が伝承されると思われる。
写真の船は船底板厚が2寸(6cm)、外板でも1寸(3cm)近くあり舳先近くでは板を曲げるため にバーナーで熱を加え、水を掛け、水を柔らかくして少しずつ水押(船首材)に近づける。梁などの 部材も太く重量のある船だ。
写真8弘光優氏、仕事場の高知市仁井田新築にて
私の和船船大工の師匠、弘光優氏。昭和3年(1928) 南国市前浜生まれである。兄も船大工であり、兄が前 浜でコク屋(造船所)を持ったので、弘光優氏は仁井田の新しく造成された造船関係の工業団地のような新築に現在のコク屋を構えた。
写真は平成18年、私が弟子入りした頃に撮影したものである。和船の造り方を教えて頂ける事にはなったが、ずっと一人で船造りをされ、他の船大工には技術を盗まれないように用心し、作業をしている 所は人には見せなかった弘光氏に上手に教えろと言うのが無理な注文で、結局は今まで作っていた通りに1つ船を作って頂いて、それを見て造り方を盗む方式に決まった。
写真9 弘光和船と私
完成して浦戸湾に浮かべた弘光和船。台風接近で上 架したところである。弘光氏の和船は伝統的な建造方 法をそのまま受け継いだ昔のままの形状を伝えている。 写真9の弘光和船は全長20尺(6m)、浦戸湾から桂浜沖で釣りをする船で、主に樽で推進し帆も上げたそうだ。船底部分を黒の塗料で塗っただけで水面より上は杉のムク板そのままで、最も和船らしいきれいな状態だ。毎日海水を掛けて塩分を木に滲みこませると、いつまでも腐らないで30年位は使用に耐えるそうだ。1年ほど経つと雨や紫外線で木の表面はくすんでくるが、新品とは違った味が出てくるのも木造船の魅力である。
写真 10 山中船大工とカツオ船
土佐市宇佐井尻の山中利雄氏(大正14年生)、宇佐海洋高校に展示されている全長7mのカツオ船模型 (3分の1サイズ)を製作した。非常に木工細工の上手な方で高齢になってからは縮尺10分の1の本物 そっくりの模型をいくつも作られた。
写真11 山中氏建造橋本船1
浦戸湾内種崎に係留している橋本氏の和船である。 橋本氏はまぐろ漁船に長く乗って世界中を廻り、今も元気にこの船で釣りに出られる。船は30年前に山中氏が建造したものである。全長7mで、ディーゼルエ ンジンで推進するために色々改良されている。
船尾部分はプロペラで高速走行する時に引き波が小さく抵抗が少ないようにフラットな形状になっている。 ディーゼルエンジンを動かすと振動が大きいので船体の強度を増すために外板の接合部には船首から船尾まで木材(縦通材)が通っており、それに外板が固定されている。推進方法が変われば船体の構造も変わっていく。山中氏は細工が上手なだけでなく、水の抵抗や船体強度に関しての船の設計のセンスも良い。
写真13 小伝馬
山中氏が作った全長4mほどの船積み用の小伝馬舟 の10分の1模型。本物の建造とほぼ同じ手順で、1 尺を1寸に縮小してあるので厳密に10分の1になっ ていて資料価値が高い。
乗り降りや荷物の上げ下ろし時に安定が良いように 舳先の浮力を大きくするため大きく湾曲したタナ板等が付けられているが、この板を曲げるのが難しく、蒸し曲げや焼き曲げの方法が取られた。櫂が付いている。櫂の中央部をひもで船縁に固定し、佐渡のたらい船のように練る漕ぎ方か普通のパドルのような漕ぎ方あるいは2つのミックス漕ぎが可能なので港の中など狭い水面での操船に便利である。私も1本持っているが、八の字に練るのは難しい。
写真 14 帆掛け船
四角い木綿の帆の上下に桁が付き、下の桁の一端が帆柱にもう一方にロープが付き帆の出し入れをする。 この形式なら帆桁と帆を船の中心線まで引き込めるので横からの風でも順調に帆走出来そうだ。千石船のような帆桁が上に1本で帆桁の中央を帆柱に固定する形式では追い風での性能は良いが横からの風では帆が引 き込めないのでスピードが落ちる。
2. 和船各部名称
この章では土佐市宇佐の山中氏製作の模型を使って和船の各部について解説していきたい。この模型は私が山中氏に初めてお会いした時に頂いた20尺伝馬船の10分の1模型である。山中氏の模型 は精密に作られており、櫓も本物と同じ作りなので和船や櫓を説明するのに非常に役に立つ。
写真15 山中模型正面
舳先部分。船を真正面から見ている。中央の棒が船 首材ミオシ(水押し)。その左右にある黒い三角に見 える部分がカジキ板。その上の板がタナあるいはウワダナ。タナ板の上端に補強材のコベリが付いている。 カジキ、タナ、コベリは船首から船尾まで通って(縦通して)いる。船首に角のように横に突き出ている梁は係留ロープなどを結ぶ。その後ろコベリの外に張 り出しているのが高知特有と言われるセキダイ。水の打ち込みを防ぎ大きく傾いた時の復原力を生み出す。川で鮎漁をする人に聞くと五枚造りの船の方が安定していて漁がしやすいと言う。船の重さや 幅等が同じという条件で復原力を計算してみると、五枚造りの船の方が三枚造りの船より船底板が深い位置になり人間の重心位置が下がるので船全体の重心が下がり安定すると考えられる。小船の場合、 人間の重さは全体重量の大きな部分を占め、船の前後バランスや安定性に大きく影響する。
写真16 山中模型後面
艦と呼ばれる船尾部分。真後ろから見ている。中央 の黒い底板はカワラと呼ばれる。カワラの左右の黒い 部分はカジキ。カワラとカジキの接合部を保護するた めにスベリ材が船首から船尾まで縦通している。タナ板は見えない。タナとカジキの最後部にL字型の飾り 板チリが付く。その上を左右に通っている太い梁をトコ、あるいはオオトコと呼ぶ。トコには中央に舵板を差し込む穴が切り込まれている。
写真17 山中模型船底
船底を見上げたところ。中央の黒い底板はカワラと 呼ばれる。カワラの左右の黒い部分はカジキ。カワラ とカジキの接合部を保護するためにスベリ材が従通している。この角度ではタナ板は見えない。外側の茶色い所はセキダイ。3本の梁が船首、中央部、船尾に突き出している。船を押したり引いたり、もやいロープを掛けたりに使う。
写真18 山中模型側面
真横から見る。船底部分カワラはミオシからほぼ水平に船尾に伸び、後ろから4分の1辺りのオリイレで 折り曲げられる。1寸2分ほどの厚みのあるカワラ板 はスムーズには曲がらないのでオリイレで船内側から ノコを入れ厚さの3分の1ほど切り込みを入れて、板を折り曲げる。オリイレでカワラを曲げないと船尾部分が水に接し抵抗が増えるので櫓で漕ぐ場合には遅くて回転しにくい船になると全ての船大工が言う。しかし船底が滑らかな曲線でないと抵抗が増えるし、 ノコで船底材を切るのは船体の強度の点からも良くない。設計上改善の余地のある部分だ。黒く見える部分はカジキ、その上がタナ、船べりに添って補強材コベリが付き、その上がセキダイ。
写真19 山中模型真上
私の製図板の上で撮影した。櫓と舵も精密に出来て いる。船尾のオオトコ(太い梁)に舵を差し込む穴が 見える。和船の弱点は舵の固定方法にある。千石船など大きな船でも舵板は金具などで固定することはなく 穴に上から差し込むだけだ。追い波などで後ろから波が打ち込むと、舵板に掛かる水圧で能本体やオオトコの舵を固定する穴などが壊れて操船不能に陥る。船側 板をトダテより後ろに伸ばしチリの板などで波の打ち込みを防ごうとしたようだ。船体中央と前部に 見える穴に帆柱を差し込む。船首から4分の1位、前の帆柱の穴あたりをハバドコロとかオモテと呼 ぶ。模型の下にはこの模型の寸法を取って描いた船の図面がある。製図板の上の方にあるのが船体の 曲線を書くための製図道具類。鉛の重しが7個並んでいる。木やプラスチックのバテン(細長い棒) を重しで固定して曲線を描く。造船の現場では木のバテンをクギで固定して曲線を描く。
3. 和船の専門用語 - はぐ、つばのみ、摺り合わせ、まきはだ、埋め木 -
弘光氏に弟子入りして船大工らしい最初の練習がこの一連の写真の2枚の板をはぐことであった。 「はぐ」という言葉は、2枚の板を並べて広い1枚の板に接合する作業を意味する。丸太を板に挽い て船などを作る時には必要な技術で接合は鉄の船クギを使う。
写真20 船クギ
左のドブ漬けメッキをした頭の小さいのがオトシク ギで板をはぐのに使う。右の頭の広いクギはカジキや タナの取り付けに使う。船クギを作っていた鍛冶屋が 高齢のため辞められ、質の良い船クギは全国的に入手 困難になった。やがて木ネジ等別の材料を使わなけれ ばいけなくなるだろう。
写真 21 ツバノミ1
船大工独特の道具として有名なツバノミ。片ツバノミと両ツバノミがある。縁あって東京の船大工のツバノミを入手できた。使うクギのサイズとも関連するだろうが、東京のツバノミは細身で上品な作りをしている。
写真 22 ツバノミ2
コク屋(造船所)の奥の一隅をもらって、その辺にころがっている木片を細工する。ツバノミはクギを打ち込む穴を開けるために使う。ノミを打ち込みクギの 道が出来たらノミを引き抜く時にツバを叩いて抜く。 板を立てて作業する時、板を固定するのにカマリン(切れ込みの入った角材)と木のクサビを用いる。これが役に立つ。
写真23 クギ穴
仮にクギを挿してあるが、右の板にノミで台形のク ギ穴を掘りクギを打ち込む穴を貫通させ、左の板には クギの先が打ち込まれる穴を開けておく。左右の板を 密着させて右からクギを打ち込む。
写真 24 はいだ板
カワラをはいだところ。下から上にクギが打ち込まれている。クギ穴はアリ(奥が広がった台形)に掘ってあり、中央の木片で埋め木をする。
写真 25 埋め木
木片の両サイドを金槌で叩いて小さくしクギ穴に斜めに叩きこむ。ノコやノミで出っ張りを削り落とすと仕上がり。接着剤を使わないのに何十年もはずれないのには驚 かされる。
写真 26 埋め木仕上げ
平らに削ると埋め木の表面に正目が出る。作業が面白いのでツバノミ、金槌、ノコギリ等で熱中してやっていると弘光氏が「おまんも船大工になったのう。船大工はそんな音をたてよらないかん。」と言う。私もうれしくてにんまりする。しかし現実はノミの刃が研げてなくて切れない、ツバノミを打ち込み過ぎると板が割れる。船クギは曲げて差し込んでもなかなかスムーズには通らない。面白いけど難しい作業である。
写真27 片山造船での摺り合わせ
クギではぐ前に2枚の板の接合面を密着させ水が漏らないよう に摺り合わせをする。
2枚の板を6本ほどの棒(ツツと呼ばれる)で天井の梁に突っ 張り固定する。固定する金具などは無く、ただ棒の携む力で突っ 張っているだけである。板の間にノコの厚みほどの竹のクサビを打ち込み、摺り合わせノコギリで2枚の板の間を摺り、隙間を無くす。ノコギリは板の表面に並行に動かし水が漏れる方向には歯の跡が付かないようにする。ノコで摺り合せた後くさびを抜くと密着する。良く考えられている。ノコギリで板の隙間を無くす方 法は日本独自のようだ。
写真28 マキハダ打ち(マキナワ打ち)
ヒノキの樹皮繊維に探りを掛けた紐で、水が漏らないように詰める。使う前に揉んで柔らかくする。ヤトコと呼ぶ刃の無いノミで接合部に打ち込む。新船では 船底から打ち込むクギの頭に巻きつけて防水性を良くする程度で、摺り合せをした接合部には使わず、古くなった船の修理の時に使う。弘光氏に言わせると、「新規の船にマキナワを打つようでは一人前の船大工とは いえん。」マキハダは高知市仁井田の山崎船具で買える。
写真 29 節埋め木1
節が抜けて開いた所は周りの堅い部分も無くなる様に四角い穴を開ける。ノミを良く研がないと写真のように汚い穴になる。
正目の木片(赤味が良い)を掘った穴より少し大き 目に切り出し、周囲を槌で叩いて小さくしてから穴に 叩き込む。出っ張った分は後で削り落とす。私はエポキシ接着剤を付けてから叩き込み隙間にもエポキシを詰め込む。エポキシは硬化すると木より硬くノミやカンナの刃を傷めるので仕上げはサンダーで研磨する。
船体に打ったクギの頭穴も同じ方法で埋め木する。基本としては、接着剤は使わない。埋め木作業は新入りの見習いの仕事だそうだ。
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ろかい用語集
ろかいに関する用語を集めました。(製作:ろかいの会)無断転載をお断りします。
ろかいの会meeting 2001年
1.ろかい用語集
2.和船の艪用語
3.土井艪の用語
4.英語のオール用語
(1) しなやかな艪の効果
・ブレードが水中で下方に曲がると、垂直方向の分力が減って、推進方向の分力が増えるため効率が良くなる。
・ブレードの返し点付近で推力がなくなると、曲がっていた艪が伸びてキック力が加わる。
・艪がしなって力を吸収するため、加えた力が平均化されて手応えが柔らかくなる。
(2) 下記の英語名が日本語では両方とも「漕ぐ」になって区別できない。新しい表現方法が必要。
・rowing :→ 漕ぐ…現状通りに使う。
・sculling:→ 揚力漕ぎ…rowingと区別する必要があるときに使用する。